腰を反らすと、痛い。

上の棚に手を伸ばしたとき。洗濯物を干すとき。ふと伸びをしたとき。

前にかがむのは平気なのに、反る方向だけがつらい。そういう出方をする方は多いと思います。

理由を探すと「反り腰」「腹筋が弱い」あたりに行き着いて、そこで話が止まってしまう。

先に結論から。

問題は、反ったことではありません。腰の一か所だけで反っていたこと。

順番に見ていきますね。

その腰の痛みは、体で何が起きている状態か

背骨は、一本の棒ではない。

小さな骨が積み重なって、そのあいだが少しずつ動く。腰のあたりだけで5つ。胸のあたりまで入れると、20を超えます。

反るという動きは、本来この全部で分け合うもの。ひとつ当たりの角度は、ほんのわずか。

ところが、痛みが出ている方の背中を見ていくと、こうなっていることがある。

上のほうは動かない。真ん中も動かない。そしていちばん下の腰だけが、カクンと折れる。

分け合うはずの角度が、一か所に集まっている。

針金を思い浮かべてもらうと早いかもしれません。

同じ一点ばかりで曲げていると、そこだけが先にくたびれる。全体をゆるくたわませるなら、何度でも曲げられるのに。

体も似ていて、偏った動き方に弱いんです。

反った角度そのものが問題なのではない。バレエをする人は深く反っても痛みません。全体で分け合えているので。

だから見るところは、「どれだけ反ったか」ではなく「どこで反ったか」。

なぜ、そこだけが折れ曲がるのか

動かない場所が、上にある

一か所に集まったということは、裏を返せば集まらなかった場所があるということ。

その筆頭が、胸のうしろ側。胸椎(きょうつい)と呼ばれるところです。

胸椎は、もともとよく動ける部位。ところが今の暮らしだと、ここが硬くなっている方が本当に多い。

デスクワークで背中を丸めている時間。スマホを見下ろしている時間。そのあいだ、胸のうしろは丸まったまま止まっています。

丸まったまま固まった背中は、反る方向へ戻りにくい。

それでも、体は反らないといけない場面に出くわす。棚に手が届かないと、困るので。

そこで、どこかが肩代わりします。すぐ下にあって、唯一まだ動ける場所。それが腰。

胸椎が出せない分を、腰が余計に引き受ける。一回ずつはわずかでも、毎日のことなので。

そこから、連鎖して起きること

肩代わりは、背中だけの話では終わらなくて。

もうひとつ、腕の付け根が関わってきます。

手を真上に上げる動き。あれは腕だけでやっているわけではありません。肩甲骨が回って、背中も一緒に反って、はじめて上まで届く。

肩甲骨が回りにくいと、腕は途中で行き止まりになる。

足りない角度を、どこで埋めるか。ここでも腰です。

洗濯物を干す。棚の上の箱を取る。カーテンレールに手を伸ばす。上を向く動作のたびに、腰が数ミリずつ反らされている。

思い当たる方は、洗濯物の場面を思い出してみてください。腕が上がりきる直前、お腹が前に出ていませんか。

そして、下からも来ます。

股関節。ここが後ろへ伸びにくいと、体を後ろへ送る動きが足りなくなる。

本来なら、反る動きには股関節も参加する。脚の付け根がわずかに伸びて、そのぶん腰の担当が減ります。

参加しないと、腰が全部やることになる。

さらに厄介なのが、立っているだけの時間でした。

股関節の前が硬いと、骨盤が前へ傾いたまま立つ形になりやすい。骨盤が前へ傾けば、その上に乗っている腰は反ります。

つまり、何もしていないつもりの時間も、腰は反りっぱなし。

一日8時間の立ち仕事なら、8時間ずっと。痛みの正体が、動作ではなく姿勢の側にある。そういうことは珍しくないんです。

ここが見落とされやすいところで。動いたときの痛みは自覚できても、立っているだけの負担は慢性的すぎて気づけない。

だから「そのときは楽になるのに、しばらくすると戻る」が起きる。

腰をほぐしても、動きの配り方は変わっていないので。

「反り腰だから」とよく混同される

反ると痛いと言うと、たいてい出てくるのが「反り腰ですね」という話。

外れてはいません。腰が反った形のまま固まっているのは事実なので。

ただ、そこから先で困ることがあって。

「反り腰だから腹筋を鍛えましょう」で終わってしまう。

お腹の力がいらないという話ではない。ただ、胸のうしろが丸まったままで腹筋だけを足しても、反る動きの受け皿は増えないんです。

もうひとつ、逆向きの誤解もあります。

「腰が動きすぎているなら、腰は動かさないほうがいい」。

これも少し違って。動きすぎているのではなく、腰だけが動かされている。ほかが動けば、腰の動きはひとりでに落ち着きます。

減らす話ではなく、配りなおす話。

それから、「姿勢をよくしましょう」で胸を張るのも、行き先を間違えやすいところ。

胸を前に突き出すと、腰の反りはむしろ強くなる。伸ばす方向は、前ではなくです。

自分で確かめられること

何かを見分けるためのものではありません。今どうなっているかを知る目安として、痛みが出ないところまでで止めてくださいね。

まず、どこで反っているか

まっすぐ立って、片手の甲を腰の後ろに差し込んでみる。手がすっと入る隙間はありますか。

そのまま軽く上を向いてみて、隙間の変わり方を見てみてください。腰のところだけが先に動く感じがあるかどうか。

次に、手を上げてみる

両手を万歳の形で、ゆっくり上げます。横から鏡を見られると、なお分かりやすい。

腕が上がりきる前に、お腹が前へ出ていませんか。あるいは、肋骨の下のあたりが開いてくる感じ。

出ているなら、上で足りない分を腰が埋めています。

最後に、脚を後ろへ

立ったまま、片脚をゆっくり後ろへ引く。骨盤は動かさずに、脚だけで。

左右で差はありますか。片方が浅いところで止まる。あるいは、腰が反ることで代わりに動く。そういうときは、股関節の側に理由があることも。

家でできること(無理をしない範囲で)

やることは3つ。上を動かす、立ち方を変える、動作の入り方を変える。

まず、胸のうしろを起こす

椅子に浅めに腰かけて、両手を胸の前で軽く組みます。

そこから、みぞおちより上だけを、ゆっくり上へ伸ばす。反らすのではなく、天井へ背を伸ばすつもりで。

5回ほど。腰は動かさないままというのが、ここでの目印です。腰が反ってしまうなら、動きが大きすぎます。

最初はうまくいかないと思います。普段使っていない場所なので、それが普通。

次に、立ち方の合図をつくる

お腹を軽く引っ込める。お尻を軽く締める。そのまま胸を上へ伸ばす。この3つで、腰の反りは少しゆるみます。

大切なのは、やる場面を先に決めておくこと。歯みがきのとき。信号待ちのとき。

一日中は続きません。思い出す場所を決めるほうが、結局は残ります。

最後に、動作の入り方

棚の上のものを取るとき、その場で背伸びをしない。一歩前に出てから、手を伸ばす。

洗濯物なら、竿の高さを少し下げる。物干しそのものを体に近づける。

腰を反らさずに済む形を、先に作っておくという考え方です。

脚の付け根を伸ばしたいときは、先にお尻を軽く締めてから。締めずに脚だけ引くと、腰が反って終わってしまう。

なお、痛みが強いときやしびれがあるときは、無理をせず専門機関にご相談ください。

医療機関を考えた方がよいサイン

腰の痛みとして感じていても、別のことが関係している場合があります。

次のようなときは、一度、整形外科で相談してみてください。

  • 脚にしびれがある。感覚が鈍い。力が入りにくい
  • 少し歩くと脚がしびれ、休むとまた歩ける
  • 排尿や排便の様子が普段と違う
  • じっとしていても強く痛む。夜、痛みで目が覚める
  • 発熱をともなっている
  • 転んだあと、ぶつけたあとから始まった
  • 心当たりなく体重が減っている
  • 反らしたときに、脚のほうへ強く響く

脅かしたいわけではありません。

反ると痛い腰の多くは、ここまで書いてきたような偏りから起きています。

ただ、上のような形で出ているときは、それだけでは説明がつかないことがあって。

とくに脚のしびれや、歩ける距離が短くなる出方。神経の通り道の話になることもあるので。

相談に行くときは、いつから/どの動きで/どこまで響くかをメモして持っていくと話が早い。

上を向いたときなのか、立ちっぱなしのあとなのか。時間帯まで書けると、なお伝わりやすいです。

まとめ

長くなったので、まとめます。

反ると痛い腰で起きているのは、反りすぎではなく、角度が一か所に集まっていることでした。

集まる理由は、上と下にある。胸のうしろが丸まったまま動かない。肩甲骨が回りきらない。股関節が後ろへ伸びない。

その足りない分を、腰が毎回埋めています。立っているだけの時間まで含めて。

だからやることは、腰を鍛えることでも、動かさないことでもなくて。動いていない場所に、仕事を返すこと。

まずは今日、歯みがきのあいだだけ。お腹を軽く引っ込めて、胸を上へ伸ばしてみてください。

腰の反りがふっとゆるむ感じがあれば、それが目印になります。