「明日、雨やと思う」
頭痛で困っている方が、天気予報より先に言い当てる。よくある話だと思います。
実際、崩れる前の日から重くなる、という方は多いです。
なんとなく気圧のせいなんやろな、とは思う。でも、なぜ気圧で頭が痛くなるのかまでは、あまり知られていません。
よく聞くのは「気圧が下がると血管が広がって、神経を圧迫するから」という説明です。
ただ、これだけでは説明がつかないことが、いくつかあって。
この記事では、そこを一つずつ見ていきますね。
先にお伝えすると、鍵になるのは耳の奥だと考えられています。
よく言われている説明と、その限界
まず、よく聞く説明を確認しておきます。
気圧が下がる。すると、体を外から押さえていた力が弱まって、血管が広がる。広がった血管が、まわりの神経を圧迫して痛みが出る。
筋道は通っています。実際、この仕組みも関わっているとは考えられています。
ただ、これだと合わないことが出てくるんです。
ひとつめ。
なぜ、崩れる「前」に来るのか。
血管が広がるのは、気圧が下がったあとの話です。でも実際には、まだ晴れているうちから重くなる方が多い。
雨が降ってから痛くなるのなら分かります。順番が逆なんですよね。
ふたつめ。
なぜ、頭だけなのか。
気圧は体の全体にかかっています。血管が広がるなら、腕でも脚でも同じことが起きているはずです。
でも、天気で腕が痛くなるという話は、あまり聞きません。
みっつめ。
なぜ、人によって差があるのか。
同じ日、同じ町にいて、同じ気圧の変化を受けています。それなのに、まったく平気な人と、寝込む人がいる。
血管の広がりだけが原因なら、ここまで差は出ないはずです。
つまり、血管の話は間違いではないけれど、それだけでは足りないということになります。
実際の体では、何が起きているか
気圧を感じ取っているのは、耳の奥
体のどこかで、気圧の変化を受け取っている場所があるはずです。
そことして考えられているのが、内耳(ないじ)です。
耳の奥にある、小さな器官。音を聞き取る部分と、体のバランスを保つ部分でできています。
このバランスを保つ部分が、気圧のわずかな変化を感じ取っているという考え方が、有力になってきています。
なぜ、耳がそんなことをしているのか。
もともと内耳は、ごくわずかな動きを拾うためにできているからです。
なかは液体で満たされていて、そこに細かい毛のような細胞が並んでいます。頭がかたむくと液体が動き、その流れで毛が倒れる。倒れ方で、どちらにどれだけ傾いたかを脳に伝えています。
目を閉じていてもまっすぐ立っていられるのは、この仕組みが働いているおかげなんですよね。
それくらい細かい変化を拾う場所なので、気圧のような小さな圧の動きも捉えているのではないか。そう考えられているわけです。
飛行機やエレベーターで耳が変な感じになるのは、内耳が気圧の変化を受けているからです。
あの感覚には気づけます。
ただ、天気の気圧変化はもっとゆるやかで、はっきりとは自覚できません。感じ取ってはいるけれど、意識には上がってこない。
それでも、体のほうは反応しています。
そこから、自律神経が動きます
内耳が受け取った変化は、脳へ伝わります。
そこで動くのが、自律神経です。
自律神経というのは、自分の意思とは関係なく、体の状態を調整している仕組みのこと。心拍、呼吸、体温、血管の太さ。こういったものを、常に加減しています。
内耳から「まわりの環境が変わっている」という情報が届く。
すると自律神経は、体をそれに合わせようとします。
このとき、体を活動側に向ける神経のはたらきが強くなると、血管は縮み、筋肉には力が入ります。
首や肩の筋肉も例外ではありません。
もともと張っている方は、そこにさらに上乗せされることになります。
この流れ、思い当たるものがあります。
乗り物酔いです。
車やバスで酔うのは、内耳が感じている揺れと、目で見えている景色とが食い違うからだといわれています。
その食い違いが自律神経を乱して、気持ち悪くなる。頭が重くなる。あくびが出る。
天気で崩れるときの体調に、少し似ていませんか。
頭痛といっしょに、めまいや吐き気、なんとなくの眠気が出る方が多いのも、入り口が同じ内耳だと考えると納得がいきます。
流れとしては、こうです。
気圧が動く → 内耳が感じ取る → 自律神経が反応する。
血管の話も、この流れのなかに含まれています。ただ、出発点は血管ではなく、耳の奥だったということです。
なお、この仕組みはまだ分かっていない部分も残っています。研究が進んでいる途中の話として読んでください。
だから、こう説明がつきます
先ほどの3つに戻ります。
なぜ崩れる前に来るのか。
気圧は、雨が降る何時間も前から下がりはじめます。
内耳はその「下がりはじめ」を感じ取っている。だから、まだ空が明るいうちから体は反応している、と考えると筋が通ります。
天気予報より早いのは、そのためです。
なぜ頭だけなのか。
感じ取っている内耳が、頭にあるからです。
そして自律神経の反応を受けやすい首や肩の筋肉も、頭のすぐ下にあります。
腕や脚の筋肉より、頭に近いところで反応が起きている。だから頭に出やすい。
なぜ人によって差があるのか。
土台の状態が違うからです。
もともと首や肩が張っていて、余裕がない状態だとします。そこに気圧の変化が乗ると、越えてしまう。
余裕がある人は、同じ変化が乗っても越えない。
天気は引き金であって、土台をつくっているのは日々の状態、という見方ができます。
ここが、できることのある部分です。
気圧は変えられません。でも土台のほうは、動かせる余地があります。
これを踏まえて、日常でできること
やれることは3つあります。
まず、記録することです。
痛くなった日と、その日の天気を、簡単にメモしておく。
前日から出るのか、当日なのか。雨の日なのか、台風のときだけなのか。
自分のパターンが見えてくると、身構えられます。来ると分かっていて迎えるのと、いきなり来るのとでは、しんどさがかなり違います。
次に、耳のまわりです。
耳を軽くつまんで、上・横・下へゆっくり引っぱる。そのあと、うしろ方向へ回す。
それぞれ5秒くらいで十分です。
蒸しタオルを耳の後ろに当てるのもいいと思います。内耳そのものには触れませんが、まわりの血流が変わります。
3つめが、首と肩の土台です。
さきほどの「差が出る理由」のところで書いたとおり、ここに余裕があるかどうかで、乗り越えられるかが変わってきます。
肩や首が慢性的に張っている方は、そちらを整えていくことが、結果として天気の日の備えにもなるんです。
首や肩の張りについては、別の記事で構造から書いています。
なお、痛みが強いときや、いつもと違う出かたのときは、無理をせず専門機関にご相談ください。
医療機関を考えた方がよいサイン
頭痛には、急ぐものがあります。
次のようなときは、様子を見ずに受診してください。
- 突然、これまでに経験したことのない強さの頭痛が起きた
- 手足に力が入らない。しゃべりにくい。視野が欠ける
- 発熱があって、首の後ろが硬い
- 頭を打ったあとから始まった
- だんだん強くなっている。頻度が増えている
- 朝方に強く、吐き気をともなう
- 50歳を過ぎてから、はじめて出るようになった
上の3つは急ぎます。
天気とともに来る頭痛の多くは、こうした形ではありません。
ただ、いつもと違う出かたをしたときに「またいつものやつやろう」と流してしまわないように、書いておきます。
いつもと違う。その感覚は、案外あてになります。
まとめ
天気で頭が痛くなるのは、血管が広がるからだけでは説明がつきませんでした。
気圧の変化を受け取っているのは、耳の奥にある内耳。そこからの情報に自律神経が反応して、血管や筋肉の状態が変わる。
そう考えると、崩れる前に来ることも、頭に出やすいことも、人によって差があることも、つながって見えてきます。
そして差をつくっているのは、日々の土台のほうでした。
気圧は変えられません。
まずは、痛くなった日と天気をメモするところから始めてみてください。自分のパターンが見えるだけでも、迎え方が変わります。


