「昨日まで何ともなかったのに、朝起きたら首が回らない」

顔を洗おうとすると痛いし、着替えるときにも首が気になる。そんな朝は、枕が合わなかったのかな、少し伸ばしたほうがいいのかなと考えますよね。

寝違えでは、首の周りの筋肉が緊張したり、関節を包む組織に炎症が起きたりしている可能性があります。痛みのために動かしにくくなっていることもあるので、まずは痛い方向へ無理に伸ばさないでください。

寝ている間の姿勢は関係しますが、枕だけが原因とは限りません。前日の過ごし方も含めて、首で何が起きているのかを順番に見ていきましょう。

寝違えのとき、首では何が起きているのか

寝違えは、目が覚めたときに首の後ろや肩にかけて痛む状態を指す呼び方です。右を向きにくい方もいれば、少し動かすだけでつらい方もいます。同じ「寝違え」でも、痛みの出方は一つではないんですよね。

首の骨は、頸椎(けいつい)と呼ばれています。その周りには、頭を支えたり、顔の向きを変えたりする筋肉が重なっています。骨の後ろにある小さな関節を包んでいるのが、「関節包」という袋状の組織です。

首を回すときは、これらが一緒に動きます。筋肉が強く緊張していたり、関節包に炎症があったりすると、振り向くような普段の動きでも痛むことがあるんです。

ただ、寝違えの正確な原因には、まだ分かっていない部分があります。 日本整形外科学会でも、筋肉の疲労や血液の供給不足、関節包の炎症などが可能性として挙げられています。

ですから、ここでお話しするのも、首で起きているかもしれない仕組みです。「自分はこの筋肉を痛めたんだ」と決めるためではなく、無理なく過ごすための参考にしてくださいね。

寝る前の負担が、朝の痛みに関係することも

動いていない時間にも、首は頭を支えている

パソコンの画面を見ているときや、書類に目を通しているとき。首をあまり動かしていなくても、筋肉は頭をその位置に支え続けています。

ここで振り返ってみたいのが、同じ姿勢をどれくらい続けていたかです。背筋を伸ばして座っていても、そのまま長く作業していれば、首の筋肉が休んでいるとは限りません。

「昨日はずっと画面を見ていたな」「慣れない荷物運びをしたな」という心当たりはないでしょうか。手で重い物を持つときにも、首や肩の筋肉が支えるために働く場面があります。

そこに、眠っている間の姿勢が重なることもあるんです。

首がねじれたまま、あるいは不自然な角度のまま長く眠っていると、筋肉の一部で血液の供給が少なくなることが考えられています。前日の疲労に伴って、筋肉が強く緊張している場合もあります。

ただ、自分が夜中にどんな姿勢だったかは、なかなか分からないですよね。起きたときに横を向いていたからといって、一晩中その向きだったとは限らないわけです。

同じ枕を使っていても、前日に何をしたか、寝返りをどれくらい打ったかは、その日によって違います。枕の高さを見直すことはできますが、痛んだ朝にすぐ「この枕が悪い」と決めなくても大丈夫ですよ。

痛みがあると、動かす前から力が入りやすい

首の周りの筋肉が強く緊張していると、顔を横へ向ける動きがつらくなる場合があります。少し動かしたところで痛みが出ると、次に動かすときには身構えてしまうこともありますよね。

頭を動かす前から肩に力が入ったり、途中で動きを止めたりする。そうした状態では、痛みを避けようとすることも、動かしにくさに関わっていると考えられます。

硬く感じるからといって、強く伸ばせばよいとは限らないのは、このためです。

また、先ほど出てきた関節包に炎症がある場合も、首を回すと痛む可能性があります。炎症とは、組織への刺激に対して体が起こす反応のこと。首の動きに伴って周囲の組織に力がかかるため、その動作がつらくなることがあるんです。

外から見て腫れていなくても、それだけで炎症がないとは言い切れません。痛む方向や、触ったときの硬さだけでは、筋肉と関節包のどちらが関係しているのかを判断しにくいところです。

長く続いた姿勢などが首の組織への負担になり、痛みが出る。そこに筋肉の緊張や、痛みを避けようとする動きが加わると、さらに首を回しにくくなることが考えられます。

首を回しにくいのは、こうして痛みや緊張が重なっているためかもしれません。痛いところを無理に動かさずに過ごすのも、首の状態に合わせた対処なんです。

いつもの肩こりと違うと感じたら

普段から肩がこっていると、朝の首の痛みも「いつもの肩こりが強くなっただけかな」と思うかもしれません。ただ、昨日までできた動きが急にできなくなったなら、その変化は分けて考えたいところです。

いつもの重だるさに加えて、今日は振り向けない。着替えの途中で首が痛む。こうした違いは、相談するときにそのまま伝えていただければと思います。

首から腕や指へ痛みやしびれが広がるときにも、注意が必要です。首の近くで神経が刺激されると、腕や手に症状が出ることがあるため、首だけを見ていても分からない場合があります。

しびれがなければ寝違えだ、と決められるわけでもありません。急に出た痛みを、いつもと同じように強く揉み続けることは控えてください。症状が強いときや続くときは、整形外科で相談してみてくださいね。

自分の状態は、日常の言葉で残しておく

首が気になると、何度も回して確かめたくなるものです。でも、どこまで動かせるか、痛みの限界を探る必要はありません。

記録するなら、いつから、どんな場面で、どこがつらいかを残しておくと、受診のときにも伝えやすくなります。

  • 朝起きてから痛むのか、前日にも違和感があったのか
  • 首の周りだけが痛いのか、腕や指にも広がっているのか
  • 着替えや洗顔など、どんな動きで困っているのか
  • じっとしていても痛むのか、夜は眠れているのか

「右に何度向けるか」と測らなくても、「右側にいる人へ顔を向けにくい」で十分です。前日に重い物を運んだなら、そのことも一緒に書いておくとよいですね。

思い当たることがなければ、分からないままで構いません。自分で原因を突き止めてから相談しなければいけない、ということではないんです。

家でできることは、つらい動作を減らすところから

朝の痛みが強い間は、まず普段の動きを少し変えてみましょう。振り向くと痛むなら、首だけをひねらず、足や体の向きを変えて相手を見るようにするとよいですね。

仕事で画面を横に置いている方は、正面へ寄せてみてください。下を向く作業も、ときどき手を止めて、楽に過ごせる姿勢へ変えていきます。首を一つの位置に固めたまま、頑張り続ける必要はありません。

荷物運びなどで痛みが増すなら、今日は量を減らしたり、人に頼んだりして大丈夫です。首が回らず周囲を十分に確認できない間は、運転や自転車も控えてください。

痛みが少し落ち着いてきたら、痛くない範囲で小さく動かしてみます。椅子に座り、顔をゆっくり横へ向けて、楽な位置へ戻すくらいからで構いません。

痛みが出る手前で止め、手で頭を引っぱったり、勢いをつけたりしないようにしてください。左右を同じ角度にそろえようとせず、回数をこなすことも目標にしなくて大丈夫ですよ。

動かしたあとにつらさが増すなら、その動きは中止します。痛みが強い朝に、無理をして試す必要はありません。

寝るときは、首がねじれたままにならず、頭を無理なく支えられる位置を探してみてください。枕の高さは、首が強く曲がったり反ったりしていないかを目安にします。高さを変えて痛みが増えるなら戻しましょう。

同じ高さが誰にでも合うわけではないので、数値よりも、横になったときのつらさが増えないかを見ていただければと思います。

痛みが強いときやしびれがあるときは、無理をせず専門機関にご相談ください。

医療機関へ相談したいとき

痛みが強くて動けない、日に日に痛みが増している、眠れないほどつらい。こうしたときは、自宅で長く様子を見ずに整形外科へ相談してください。

腕や指のしびれ、物を持ちにくいほどの力の入りにくさも、早めに伝えたい変化です。転倒や交通事故のあとに始まった痛みも、寝違えだと思い込まず、受診して確かめてもらいましょう。

また、首の痛みとともに、次のような症状が急に出たときは、救急の受診が必要です。

  • ろれつが回らない、物が二重に見える、顔や手足に力が入らない
  • 強い頭痛がある、意識が普段と違う

その場合は119などへ連絡し、自分で運転して向かわないでください。全部をうまく説明しようとしなくても大丈夫です。首の痛みと一緒に、どんな変化があったかを伝えてくださいね。

朝の痛みを、無理に確かめなくて大丈夫です

寝違えには、筋肉の疲労や緊張、関節包の炎症などが関係している可能性があります。眠っている間の姿勢だけでなく、前日の過ごし方も手がかりになりますが、一つの原因に決められるものではありません。

首が回らない朝は、つらさが増す動作を減らして過ごし、痛みが落ち着いてきたら、痛くない範囲で少しずつ動かしてみてください。

その間に、いつから、どんな動きで困っているかを書き留めておくと、相談するときにも役立ちます。強い痛みやしびれがあるなら、無理に動かして確かめようとせず、先に医療機関へ相談してくださいね。